如意輪陀羅尼神呪経

現代語訳
除破一切悪業陀羅尼品
第一
このように私は聞いております。
ある時、仏は、大菩薩衆と一緒に伽栗斯山におられた。その時、観世音菩薩摩訶薩は座から立ち上がり、衣服を整え、胡跪し合掌して仏に申し
上げた。([世尊よ、私に摩訶波頭摩栴檀摩尼心輪という名の、大陀羅尼法がございます。よく一切の事において、求るところを成し遂げる事ができるのです。もしも如来よ、私がこの大陀羅尼法を説くことを、如来大慈悲をもってお許し下さるならば、私はその神力を受けて、一切の衆生を利益するために説こうと思います。何故かと言えば世尊よ、この陀羅尼には、摩尼宝のような、また如意樹のような大神力があり、一切ぬ願いを満たすことができるからです。(その時、世尊は、観世音菩薩を讃えて言われた、
[よろしいよろしいあなたは慈悲の心から衆生を憶ってこのような問いをされたのですね。あなたが大陀羅尼法を説くことを許しましょう。心おきなくこの陀羅尼を説きなさい。))観世音菩薩は仏の許しを得たことですぐに立ち上がって、合掌し、仏に礼拝
すると、座っていた元の場所に座し、その説法会場に集まっている多くの聴聞者をはっきりと観て大慈悲を起こし、すぐに陀羅尼呪を説いた、
(仏法僧の三宝に礼し奉聖者観自在菩薩摩訶薩 大悲尊に礼したてまつる さて
ああ 転法輪尊よ 如意宝珠尊よ 
大蓮華尊よ
悪魔怨敵は速やかに残滅したまえ いつまでもとどまって 光焔をわれに くまなく 照らしたまえ はらいたまえ きよめたまえ 幸あれかし
已上は身呪です

帰命したてまつる 蓮華尊よ 如意宝珠尊よ 輝きたまけ 満願せしめたまえ
 已上は心呪です
施与すること広大無限なる蓮華尊に帰命したてまつる満願せしめたまえ)

観世音菩薩がこの如意輪陀羅尼説き終わると、その時、大地は六種に震動した。天人、龍神、夜叉、乾闥婆、阿修羅,迦楼羅緊那羅,摩睺羅伽などの宮殿はことごとくみんな震動したので、魔王や多くその他の魔たちも、大いに驚き怖れていると、魔王の宮殿からみな火が起こり、これ以外の夜叉と悪鬼も、みなおののき恐れ、顔を伏せて地に倒れ、すべての地獄の門は開き、罪人は解き放たれて、天の最高の快楽を感受したのであった。
その時、天の神々は、宝華そしていろいろの宝荘厳具を天より降らし、多くの天の神々の音楽は、虚空中に鳴り渡り さまざまな歌声で如来を供養した。
すると世尊は、清らかな声で偈を説き、観世音菩薩摩訶薩を讃えて言われた、
(すばらしい、すばらしい汝、菩薩よ。衆生を愍れみ念い 如意輪陀羅尼を説いたて、よく衆生に、大きな勝れた利益が与えた)
そして、世尊は、続けて
観世音菩薩に言われた、(あなたは、もろもろの衆生を哀れみ救おうと、この大神通王陀羅尼法を説いたのですね)
観世音菩薩は、仏に申し上げた。
(もし善男善女と比丘比丘尼と、在俗の男女の信者と、そして童男童女が今の生活の中で 現世の利益を求めようとして、昼も夜も一心に精進し、この陀羅尼を忘れず、また、時や日が良いとか悪いとかを気にせずに、この陀羅尼を誦え通すことができたならば、たちどころに功験を示すことで有りましょう。
すべて、求る所のことは、まさにこの陀羅尼を百ハ遍くり返して誦えれば、そのまま百千のことが成就されるでありましよう。
この如意輪陀羅尼より勝れた神呪は、さらにこれ以外にはありません。
わけは何かと言えば、過去の悪業による現在の大きな障害を、一つ残らず破壊してくれるからです。
もしよくこの陀羅尼を誦えるならば、阿鼻地獄に堕ちても、ただちに解脱を得て、
父母を、 殺すなどの5種の重罪も、やはり、ことごとく滅除されることは言うまでもありません。
ましてや、その他の悪行や、多くの厄難や一切の失病を滅除しないことがどうしてありましょうや。
あるいは、熱病にかかって四日を経たり、あるいは昼夜にわたり、風邪、黄痰、おでき、等に病むことがあろうとも、この陀羅尼を誦える人は、すべてその病気を癒す事が出来ましょう。あるいは、虫の毒、のろい、めんちょう、かゆみ、らんしん頭痛、および耳鼻、しんぜつげし、咽喉口、面頭脳、胸脇心腹、腰背、脚手頭足などの痛みがあっても、この陀羅尼を誦えれば、ことごとく治るでしょう。みな身中にある病気は、いずれもすべてこれを癒すでありましょう。

あるいは、夜叉,羅刹、毘那夜迦のよえな悪魔や鬼神も、この陀羅尼を誦える人を害することが出来ないばかりか、また、刀兵、水火、悪風雨雹、怨家強盗、悪王悪賊さえも、ついにその人を害することはできません。
また、黄死、もなく、さらに、もろもろの悪夢やまむし、蠍、ヤモリ,ムカデ、蜘蛛、等の多くの悪毒、獣、獅子、虎、狼、もみな害することはできず、兵闘戦陣にも、すべて勝利できるでありましょう。もしも、官亊の訴訟あれば、みな和解するでしょう。
もしも、この陀羅尼を一度誦えれば、述べたことがらは、意を叶えることができましょう。
もしも、日々にこの陀羅尼を百ハ遍誦えるならば、観世音菩薩がその人に次のように告げるのを見るでありましょう。
(汝ら善男子よ怖れることはありません。どの様な願いを求めたとしても、その願いの一切をあなたがたに施し、阿弥陀仏は自らその姿を現れして、極楽世界の荘厳さらたありさまを、その人に見せるでありましょう。
それは経の中に説いている通りなのです。また、極楽世界の諸菩薩衆を見、十方こ一切の諸仏を見、観世音菩薩がおられる
補陀羅山を見て、すなわち自身は清浄となるでしょう。
また、常に諸王、公卿、宰相の恭敬と供養を受けて、衆人に愛し敬われるでしょう。その人の生まれる場所は母胎ではなく、極楽世界のみごとに開いた
あざやかな蓮華の上
であり、その地で己が過去の姿を知ることができる宿命智を常に具え、今日から、初めて仏となり、ついに悪道に堕ちることなく、常に仏の前にうまれるでありましょう))

大法輪閣 七観音経典集 伊藤丈著
より

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世間財と出世間財です。